陰陽五行説
陰陽論
陰陽の概念
陰陽とは、自然において互いに関わり合いながら対立し、ある事物と現象の両方に対する総括です。陰陽は、関わり合いながら対立する2つの事物、または同一事物内において互いに対立する側面を説明する。 例えば、上と下、外と内、春夏秋冬、明と暗、天と地などの事物現象も陰陽で説明できる。上・外・春夏・明・天は陽で、下・内・秋冬・暗・地は陰であると説明できる。この様に陰陽で説明できるものは、相互関連と相互対立、2つの条件を備えていなければならない。上と地、明と内などは相互関連がなく陰陽として説明できない。また、上と天、外と明などは相互関連はあるが相互対立していないので説明できない。陰陽学説で『陽』は積極・頑強・上昇・活動・温熱などの特徴を示し、『陰』は消極・柔弱・下降・静止・寒冷などの特徴を示す。
陰陽の対立
陰陽の対立:陰陽2つ側面が互いに制約しながら牽制しあうことを陰陽の対立という。これは中医学において生理・病理・治療に応用される。例えば風邪をひいたときに、発汗して熱を下げますよね。これが対立と牽制の考え方です。
陰陽の相互依存:陰と陽は、単独で存在できない、互いに依存しあうことをいう。陰がなければ陽はなく、陽がなければ陰もない。中医学ではこの相互依存のことを『互根』という。
陰陽の消長:陰陽の2つは対立し、絶えず運動変化する状態にあることをいう。常にどちらかが強くなったり、弱くなったりを一定の枠内において繰り返し変化している。冬から夏にかけ昼〔陽〕が長くなり陽気が強くなって暖かくなってくる。これは「陰消陽長」の過程である。反対に、冬は〔夜〕が長くなり陰気が強くなって寒くなってくる。これは「陽消陰長」の過程である。一定の枠内での「消長」は正常であるが、この枠を超えてしまうと異常な状態となる。この異常な状態が、自然では異常現象、人体では病を引き起こします。
陰陽の転化:事物や現象の相対する2つの陰陽属性をもったものが、ある一定の条件のもと、対立する方へ転化することをいう。例えば陰が極点に達すると陽に転化し(「重陰必陽」という)、陽が極点に達すると陰に変化する(「重陽必陰」という)。寒が極点に達すると熱に転化し(「寒極生熱」という)、熱が極点に達すると寒に転化する(「熱極生寒」という)。
さてここで過去問です。
第13回
問題① 陰陽のリズム現象はどれか?
1.陰陽可分
2.陰陽転化
3.陰陽消長
4.陰陽制約
解答 問題①-2
陰陽論ってこうしてみると、宗教みたいですね。でも、仏教などの思想も根強く残っており、物事・現象は絶えず変化・揺れ動いているというのは、はり治療をさせて頂いていても感じるところがあります。陰陽のバランスで、自律神経のバランスや免疫力のバランスを知ることができます。ずいぶん前から西洋医学で細分化しすぎた専門科目を見直す方向に向かっています。太極にたって全体的に人の体を診る。西洋医学も東洋医学も通じるところがあるのかも知れませんね。
中医学での陰陽論
人体の組織構造:人体のすべての組織構造は、陰と陽の2つに分けることが出来る。外を陽、内を陰とみなす。人体の背を陽、腹を陰とみなす。臓腑では臓を陰、腑は陽とみなす。肝・心・脾・肺・腎の五臓は陰とみなし、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦は六腑は陽とみなす。
人体の生理機能:人の正常な生命活動は、陰陽の対立と統一のバランスが保たれた結果であると考える。素問に『陰は内にあり、陽の守りなり。陽は外にあり、陰の使いなり』とある。「陰は内にあり」とは物質が体内にあるという意味で、「陰は内にあり、陽の守りなり。」とは、物質は体内にあって、機能を生じさせる源であるということ。「陽は外にあり、陰の使いなり」とは、機能活動は物質運動の現れであるということを意味する。このように体内の陰と陽の対立と統一のバランスが保たれた状態を『陰平陽秘』といい健康な状態である。もし何らかの原因で、陰陽の対立と統一のバランスが崩れた場合には、お互いが存在する条件を失い、「孤陰」、「孤陽」となり単独では存在できなくなる。陰陽が互いに離れ消失し、人体の生命活動も終結する。また、人体の生理活動は、昇・降・出・入の4つの機能からなる。陽は昇・出、陰は降・入を司ります。
五行説
五行学説とは
五行学説の根源は、古くは五方説にさかのぼることができる。五方説とは、5つの方位概念によるもので、「中商」、「東土」、「南土」、「西土」、「北土」からなり、当時(紀元前17世紀~紀元前1046年)すでに方位の思想があった。五行は『木・火・土・金・水』の5つからなる。五行学説とは、あらゆる自然現象や人事を『木・火・土・金・水』の5つに整理する。陰陽論とともに、五行学説も中医学のたいしてかなりの影響をおよぼした。
五行の特性
木曰曲直:曲直とは、実際に樹木の枝幹が曲直して成長するありさま。木の特性は、成長・発展・伸びるなどである。 火曰炎上:炎上とは、燃える火を指し、温熱で上昇する。火の特性は、温熱と上昇するなどである。 土爰稼穡:稼穡とは、土には種まきの時と収穫の時期があることをいう。土の特性は、受納と生化の働きがある。 金曰従革:従革とは、変化を指すが、中医学では清潔・収斂・屈服などの意味をもつ。 水曰潤下:潤下とは、上から下へ流れることを指す。水の特性は、湿潤・寒冷・下降などである。
※同じ行に属するものは、性質が似ているか、何らかのつながりがある。
五行の相性・相克関係
五行には相性・相克・相乗・相侮の4つの関係がある。。。
1.相性:相性とは、互いに助け合う関係である。生むものと生まれるもの、母子関係にあるといわれている。木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じて、相性関係は循環する。
2.相克:相克とは、克するものと克されるもの関係で、抑制関係にある。木は土克し、土は水を克し、水は火を克し、火は金を克し、金は木を克す。
3.相乗:要因は2つあり、1つは五行のある1行が強すぎることである。例えば木が強すぎると、土が克されてさらに弱くなる。これを「木が土を乗する」という。もう1つは五行のある1行が弱くなったためである。例えば土が虚の状態になるとそれに乗じてさらに土を弱め衰弱させる。これを「土虚木乗」という。相乗は異常な相克関係である。
4.相侮:相侮とは相克の反対の順序と逆方向の異常な抑制である。2つの場合がある。1つは、五行のある一行が亢進することにより本来それを克していた行がそれを抑制できなくなり反対に抑制される状態、「金侮木」など。もう1つは、本来克す側のある一行が衰弱し、克さえるはずの行が反対に抑制する状態、「金虚木侮」など。