不妊症
不妊症とは
①不妊治療の種類
②鍼灸の不妊治療はいつから始めたらいいの?
③鍼灸治療を併用することで不妊症を克服
④東洋医学から診る不妊症
⑤IVF(体外受精)での排卵誘発法について
不妊治療の種類
不妊症の治療には、一般不妊治療と高度生殖医療があります。
一般不妊治療の種類
○タイミング法・・・不妊症かもしれないと思って初めて病院を訪れて、異常がなかった場合、通常最初に行なわれるのがタイミング療法です。
○ホルモン療法・・・不妊の原因にはホルモン分泌異常が要因の一つとなっている場合が多いので、ホルモン剤を用いて体内のホルモンバランスを調整し、より妊娠しやすい体に近づけます。この治療は男女問わずおこなわれます。ホルモン療法が適用される場合。
排卵障害の治療
着床障害の治療
子宮内膜症の治療
造精機能障害の治療
○AIH(人工授精)
○FT(卵管鏡下卵管形成術)、卵管手術
高度生殖医療の種類
○IVF(体外受精)・・・卵子と精子をとりだして試験管中で受精させ、受精した卵細胞のうち良好な胚細胞を選び子宮内に注入する治療法です。
○ICSI(顕微授精)・・・精子の状態が悪く、体外受精によっても受精しなかった場合、精子を人為的に卵子の中へ直接注入し受精させる方法です。
鍼灸の不妊治療はいつから始めたらいいの?
不妊治療をはじめるタイミングは人それぞれですが、妊娠を希望し、夫婦生活を行って半年たっても妊娠しない場合は病院に行ってみるのがいいかも知れません。
当院に来院される方(自然妊娠を望まれる方・不妊専門外来を受診中の方)の多くは、西洋医学と東洋医学を併用する形で通院されています。西洋医学による不妊症治療の成功率は、約20~28%といわれています。まずは東洋医学で健康的な心とカラダの土台を作って、その土台の上に西洋医学の治療を取り入れることによって、身体にやさしく効果的な治療が期待できます。
例えば基礎体温が2相性とならず、病院で治療をしているにも関わらず改善しない方は、自律神経免疫療法により自律神経のバランスを整えたり、免疫力をアップさせることにより自然治癒力の向上させ、症状の改善が期待できます。また鍼灸治療を受けることにより、不妊治療によるストレスを和らげ、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。
鍼灸治療を併用することで不妊症を克服
《米国生殖医療学会誌(2002年4月号)に掲載された報告》
体外受精の前後に鍼施術をすると、妊娠率が大幅に向上するという研究結果を、ドイツと中国の研究チームがまとめました。米生殖医療学会誌に掲載された報告によると、体外受精(IVF)を受ける女性160人を2つのグループに分け、一方に体外受精の際受精卵を子宮に戻す前後に鍼治療を実施。もう一方のグループには、鍼治療をせず通常の体外受精を行ったところ、 鍼治療を行ったグループの妊娠率が42.5%に上がり、通常の26.3を大幅に上回ったという結果がでました。体外受精の妊娠率は、高くても3割程度とされていたので、これには世界中から鍼灸治療に関する問い合わせが殺到したそうです
英国医師会誌に掲載された記事
体外受精(IVF)を受ける女性が同時に鍼(はり)治療を受けると、妊娠の確率が65%高くなることが予備研究によって示され、
英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」オンライン版に2月7日掲載された。
全カップルの約10~15%が不妊に悩んでいるといい、体外で受精させた卵を子宮に移植するIVFを選ぶカップルも少なくない。鍼治療がIVFの成功率を高めるという証拠は、これまでにもいくつか示されていた。
今回の研究は、米メリーランド大学医学部のEric Manheimer氏らが、IVFを受けた女性1,366人を対象とする7試験について検討したもの。いずれの試験も、胚移植から1日以内に鍼治療を受けた女性と、疑似鍼治療(sham acupuncture)を受けた女性または鍼治療を受けなかった女性とを比較していた。その結果、鍼治療を受けた女性は、そのほかの女性に比べて妊娠する確率が65%高かった。しかし、妊娠率がもともと高かった試験では鍼治療による効果は少なく、有意差はみられなかったという。「IVFの補助療法として鍼治療が有用と思われるが、裏付けにはさらに研究を重ねる必要がある」とManheimer氏は述べている。
これに対し、米国鍼医学会(AAMA)元会長のMarshall H. Sager博士は、「今回の結果は驚くには当たらず、鍼治療の利用でIVFの成功率を上げてきた自分自身の経験がこの研究によって裏付けられた。IVFを受ける女性は、鍼治療により成功率を上げることができる」 と述べている。』
鍼灸治療によって妊娠率が向上する科学的な理由はまだ分かっていませんが、鍼灸治療は卵巣や子宮だけでなく全身の機能を改善し、結果的に子宮などの局所循環だけでなく、全身の血行循環やホルモンバランスを改善し、体外受精(IVF)のみでは自然妊娠に比べると流産率が高くなってしまいますが子宮内に胚が着床しやすい状態に導くことが推察されます。
妊娠の確率は女性の年齢にも大きく左右され、30代前半までの体外受精による妊娠率が2~3割であるのに対して、30代後半は2割、40歳では1割に低下するといわれています。
東洋医学から診る不妊症
主な原因は、大きく分類すると『気』・『血』・『津液』に分類されます。『気・血・津液』に深くかかわるのは、腎・肝・脾となりますので、もちろん治療でも、自律神経調整の経穴(ツボ)とともに腎・肝・脾にかかわる経穴(ツボ)を使っていきます。
「気」が関わるものとしては腎虚、肝鬱が考えられています。「血」・「津液」が関わるものとしては胆湿、瘀血が原因と考えられています。
腎、肝、脾といった文字がでてきますが、腎臓、肝臓、脾臓などの臓器そのものを意味しません。それらを含んだ、もっと広い概念です。東洋医学の分類では、①腎虚 ②肝鬱 ③痰湿 ④瘀血の4つになる。
腎虚
中医学では、『腎』とは生命力、活力の源、生命エネルギー(精気)を貯蔵する器官です。古代中国の古典には、女性は28歳が最もカラダが充実している時期で、そこから徐々に衰えていき49歳になると腎の気が衰えて月経がなくなるとあります。このように『腎』の気が衰えることを腎虚といいます。『腎虚』の原因をさらに分けて、『腎の陽虚』と『腎の陰虚』と2つに分けます。「陽虚」の場合は、機能的な部分での低下を示す、排卵がない、黄体機能不全、無月経などが考えられる。「陰虚」の場合は、陰液の働きの低下で子宮頸管、卵管での粘液分泌不足などが考えられる。
肝鬱
イライラやストレスが溜まっている状態をいい、肝血不足と機能低下によって肝鬱になる。そのために、気血の流れがうまくいかず衝脈や任脈の働きが悪くなることによって、無排卵や卵巣機能が低下するとされています。
痰湿
これは、肥満傾向や脾・腎の機能低下の人が、過食するなどにより湿の問題が起きた場合です。 これらが原因となって気血の流れが悪くなり、衝脈と任脈の機能が低下し、そのために結果的に卵巣機能が低下すると考えます。
瘀血
血瘀は日本的な言い方では「血の道」といいます。血の流れが悪いことにより生じる病態です。気血の流れがスムーズでない状態を血瘀と呼び、慢性的に下腹部の血流が悪くなっています。子宮や卵巣の血流が十分でない状態のことを「腹部血瘀」という。症状としては、冷え性、月経痛のように子宮内膜症が疑われるような症状があり無排卵や卵巣機能低下にもなります。